私は現在、医薬品や顧客支援システムの営業として、主に大きな病院や薬局などを担当しています。また弊社では新型コロナウイルス治療薬を取り扱っているため、各病院の病床数や患者受入れ状況などの確認を行いながら、治療薬の発注に対して安定的で適正な納入ができるよう、在庫管理をはじめとする社内の体制を整えることも私の大事な業務のひとつです。一昨年より供給問題が浮き彫りになっている後発品の対応についても、欠品を極力起こさないよう努力しています。病院や薬局で触れる医薬品を通して、人々の健康の回復・維持・増進のお手伝いができればと考えています。

コロナ禍初期においては、社会的に医薬品の供給がとても不安定だった時期がありました。そんななか、私が社内やメーカーと交渉を重ね、重症患者を受け入れている病院に医薬品などをスムーズに供給できたときに、とても感謝されたんです。自分が医療業界で担っている重責を改めて実感することができました。またその病院には若手のころからお世話になっており、私が昇進したことを担当の方へ報告すると、大きな声で「おめでとう!頑張ってるもんな!」と労ってくださいました。一取引業者であっても同じチームの一員として認めてくださっていることに喜びを感じました。

私が現在の仕事を志した理由のひとつには、東日本大震災が大きく関係しています。あの日、私は祖父母宅のある岩手県陸前高田市に滞在していました。街が津波に飲み込まれる光景を目の当たりにし、また食料や医薬品が不足する生活を強いられた人々と共に過ごしました。食料であれば多少不足してもすぐに大きな問題になることはありませんが、医薬品に関してはそうはいきません。その日薬が飲めなかったら、命に関わることだってあり得るんです。そんな光景を見てきたからこそ、私は命に関わる物品のサプライチェーンを支える仕事がしたいと思うようになり、この仕事を選びました。そして今、新たな非常事態である新型コロナウイルス感染症の流行に対して、医薬品供給によって人々の健康な生活を守る業務に就いていると考えると、とても感慨深いものがありますね。

震災の難を逃れた自分はどう生きるべきか?を自問し続け「自身が納得するまでやりきる」という結論に至りました。大学生活をやりきるために、学業やゼミの活動に注力するほか、ゼミナール連合協議会の渉外局長、インナー大会の実行委員長を大学3年時に務めました。職員の方はもちろん、他大学や社会人の講師の方、大会運営や参加学生とさまざまな立場の人々と接して交渉する機会が多かったため、交渉に必要なスキルが身についたと思います。またゼミでご指導いただいた芝村先生の専門が経済統計学ということもあり、数字から情報を読み取る分析能力、相手への伝え方などを学ぶことができました。このスキルは現在の業務でも非常に役に立っていて、お客様への提案の際に、データと熱意の両方をもって交渉にあたることができていると感じています。

私は学生時代から後輩を育てることを常に念頭において活動していて、社会人になった今でもその思いは大切にしています。私が身につけたスキルや考え方を伝えることで、部下の仕事の質や人間性も育てていければと思っています。そして部下や後輩から学ぶことで、私自身もさらに成長していければ理想的ですね。また学生のみなさんにお伝えしたいことは、大学生という限りある時間の中で、チャレンジできる機会や学べる機会をぜひ大切にしてほしいということです。今はコロナ禍ということもあり、将来を具体的にイメージできない人もたくさんいるでしょう。だからこそ、チャンスを大切にして、ゆっくりでも前を向いて進んでもらいたいと思います。

今回のインタビューで印象的だったのは、中川君はゼミナールにおける学びや学生団体の運営において数多くの仲間や教職員との関わりの中で主体的に学び、経験を積み重ねたわけですが、そうした行動が中川君の卒業後の活躍に直結していること、そして、中川君の学生時代の過ごし方の背景には強い動機や使命感があったことです。日本大学商学部にはゼミナール、学生団体、資格取得講座など、同じ興味関心や目標を持つ仲間とともに成長できる機会が数多くあります。中川君のストーリーは、在学生の皆さんにとって、とても良い励みになるのではないでしょうか。

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