FIFAワールドカップの経済効果とは?
日大商学部3学科の教員が徹底解説!


2026年6月11日、
サッカーの世界的祭典
「FIFAワールドカップ2026」が開幕します。
世界中が熱狂するこのイベントを、
日大商学部の教員はどう見ているのでしょうか。
本学部3学科の教員が、
それぞれの専門領域から
ワールドカップの経済効果をひもときます。


CAST

  • 商業学科 田部 渓哉 准教授

    [専門分野]
    広告・マーケティングコミュニケーション
    [担当科目]
    広告コミュニケーション/マーケティング論

  • 経営学科 坂本 義和 教授

    [専門分野]
    経営史
    [担当科目]
    経営管理論、Management

  • 会計学科 丸岡 恵梨子 准教授

    [専門分野]
    財務会計
    [担当科目]
    簿記論


Question 01 イベントがあると、
ついつい財布の紐がゆるむのはどうして?

ANSWER

商業学科 田部 渓哉 准教授

イベントという「非日常」が、人々の購買意欲に影響を与えているためです。スポーツイベントは、映画やドラマといったコンテンツとは異なり、「リアルタイムで視聴すること」に大きな価値があります。「世界中の人が、同じ試合を同じ時間に見ている」という事実は特別な一体感を生み、人々の気持ちを盛り上げます。そんな非日常とも言える状況だからこそ、「せっかくの機会に何かしたい」という意欲を生み、スタジアムやパブリックビューイングへ足を運んだり、応援グッズを購入したりといった行動変容へとつながるのです。
また、FIFAワールドカップのような国際的なスポーツイベントは、普段はそのスポーツに興味がない人であっても「自分の国を応援しよう」という気持ちになりやすいもの。ユニフォームを身に着けたり、フェイスペイントをしたりするのは、応援の思いを形に表す行為です。企業はこうした「応援意欲の高まり」に注目し、関連商品を販売したり、イベントを開催したりします。それによって、ますます非日常の雰囲気が盛り上がり、人々は購買意欲をかき立てられていくのです。

POINT

企業が大会の公式スポンサーになったり関連商品を販売したりするのは、「この大会を応援している企業ならば信頼できる」と、消費者に好印象を抱いてもらいやすくなるからです。自国が勝ち進むほど、メディアなどで話題になり、よりたくさんの人が関心を持つようになることが分かっています。「私も見てみよう!」とスポーツのライト層が応援に参加し始めると、大会は一層盛り上がり、企業にとって自社の認知度や好感度を上げる大きなチャンスとなります。

ただ、自国が敗退してしまった途端にライト層は急激に興味を失って、試合を見たり関連商品を購入したりしなくなります。自国の勝敗は運も大きく絡みますから、企業は大会が開催される前から周知に力を入れ、1人でも多くの人に、「早い段階で大会へ関心を持ってもらう努力」をする必要があるでしょう。チームの魅力や選手のキャラクター、これまでのストーリーなどを伝えることで、あまり詳しくない人でも興味を抱いて応援したくなります。話題作りなどの工夫をすることも、経済効果を高めるポイントです。


Question 02 なぜ、企業はFIFAワールドカップに
協賛するの?

ANSWER

経営学科 坂本 義和 教授

企業がFIFAワールドカップなどの大きなスポーツイベントへ協賛する理由の1つは、大会を通じて企業そのものやブランド、製品を広く知ってもらう機会を得るためです。それによる具体的なメリットとしては、短期的には製品の売上向上や企業、ブランド、製品のイメージアップなどが考えられ、長期的には企業の価値向上などが期待できます。
そのような広告効果を考えると、大会の規模が大きければ大きいほど、そして大会に参加するファンが自社製品のターゲットと重なっていればいるほど、多大な効果が出るでしょう。例えば、近年、ラグビーワールドカップ™のグローバルパートナーになった日系ビールメーカーは、会場に大々的に広告を出し、また公式ビールメーカーとして会場内の販売を担っています。世界規模の大イベントであること、それに加えてラグビーファンはビールを飲みながら観戦する可能性が高いことから、高い広告効果を上げていると推測されます。

POINT

大前提として、FIFAワールドカップをはじめとする世界的なスポーツイベントは、利益を得るための興行ビジネスです。ビジネスゆえに利益を得ることが重要となり、協賛企業はそのビジネスモデルに組み込まれることになります。したがって企業にとっては、イベント自体のビジネスモデルに対する期待度が協賛するか否かの判断基準となります。また、そのビジネスモデルの観点に加えて、そのイベントが有する社会的目的やイメージが企業のビジョンやミッション、価値観と離れていないかについても判断基準となります。

さらに協賛を決めたスポーツイベントにネガティブな印象が生じると、協賛企業が想定していたメリットがデメリットに転じる可能性もあります。例えばイベント運営のトラブルや運営責任者の問題発言などがあると、イベントをネガティブに捉える消費者が出てきます(過去には協賛企業製品に対する購入ボイコット運動の事例もあります)。このように、各企業は、大会への協賛が常にプラスの効果を生むものではないというリスクも念頭に置いておく必要があります。


Question 03 FIFAワールドカップの経済効果は、
どのように算出されている?

ANSWER

会計学科 丸岡 恵梨子 准教授

「経済効果」は、「経済波及効果」とも呼ばれます。ある産業に新たな需要が発生すると、原材料や資材の取引などが活発になり、他の産業の生産活動にも影響を及ぼします。その「影響」を「波及効果」という言葉で表現しているのです。
経済波及効果は、「産業連関表」という統計表を用いて計算された、「直接効果+間接効果(第1次間接効果+第2次間接効果)」によって導き出されます。直接効果とは、例えばFIFAワールドカップの場合、新たにスタジアムを建設した費用やチケットやグッズの購入、試合観戦時の宿泊費や飲食代といった「観客による消費」などを指します。一方、間接効果とは、スタジアム建設時の資材流通や協賛企業の広告効果などのことです。産業連関表は、中央省庁や各自治体のホームページなどに掲載されていますから、詳しく知りたい人はぜひそちらをチェックしてみてください。

POINT

経済波及効果は、ある大会やイベントが開催される前に、過去の類似大会・イベントへの参加者数などを基に計算した数値です。あくまでシミュレーションによって算出されたものですから、黒字もしくは赤字などの判断は大会やイベントが終わってから検証する必要があるでしょう。また、算出する機関によって過去の参加者数などを参照する大会やイベントは異なり、数値にばらつきが出ることがあるため、注意が必要です。

スポーツイベントで新たにスタジアムの建設などをした場合、その後、別のイベントなどに活用して消費を生んだり、雇用を創出したりしてさらなる経済波及効果が期待できます。一方で、施設の維持管理には決して少なくない費用が発生します。それを考えると、過去に発表されている経済波及効果の数値は、過大に試算されているかもしれません。数値をそのまま鵜呑みにすることなく、冷静に見る必要があるでしょう。


Let's Study the FIFA World Cup !

日大商学部での学びは、
FIFAワールドカップをより深く楽しむための新しい視点を与えてくれます。
講義を通じて身につく知識は、
イベントの裏側にある戦略や数字を読み解く力へとつながるはず。
イベントがもっと面白くなる「おすすめの学び」を、
3学科それぞれの視点からセレクトしました。

広告を見比べ、
企業の狙いを考えられるようになる!

大会開催時は、さまざまな企業がCMやキャンペーンを通じて大会を盛り上げます。非スポンサー企業がルールに違反しない範囲で大会の雰囲気を取り入れた広告を出すこともあり、スポンサー企業のものと見比べてみるとさまざまな発見があるでしょう。
広告論やマーケティングコミュニケーションを学ぶと、各企業の狙いや伝えたいメッセージを多角的な視点で考えられるようになるはずです。

経営戦略の観点からチームや試合を
解釈できるようになる!

組織マネジメントに関する分野を学ぶと、団体スポーツに欠かせないチーム運営やリーダーシップ、メンバー間の協働といった観点からチームをみることができるでしょう。
また、経営戦略に関する分野も役に立ちそうです。「2018 FIFAワールドカップ」において、日本代表はグループリーグの最終戦において、あえて負ける選択をしました。これは決勝トーナメント進出という目標達成において正しい選択であったといわれています。経営戦略に関する分野を学ぶと、戦略的観点から試合をみることができるはずです。

大会開催で動くお金を
イメージできるようになる!

大会やイベントが盛り上がると、それによって生じる利益にばかり注目が集まりがちです。しかし、その利益を生み出すためにかかった費用はどのくらいなのか? という側面にも注目してみると、違った発見があるでしょう。大会準備に莫大な費用をかけた場合、大きな経済波及効果を見込んだとしても、生まれる利益はそれほど大きくないかもしれません。商学部で学ぶ商学や会計学などは、経済活動にまつわるお金の動きを知るための手掛かりになるはずです。


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