未来 × 経営組織論

日本大学商学部教員の研究紹介

わたしたちの
未来の話をしよう Vol.3
松野准教授

未来のために、
いま知りたい経営組織論のこと

日本大学商学部には、さまざまな分野に精通した教員がいます。各分野の専門家である商学部の先生方から、わたしたちがより良い未来を生きるためのヒントを伺っていくのが、連載企画「わたしたちの未来の話をしよう」です。 第3回は、経営組織論を専門とする松野先生です。先生のご研究内容と共に、非営利組織が抱える問題に触れながら、日本大学商学部で学ぶメリットや将来に向けた進路の選び方、学生のうちにやっておくべきことなどについて伺いました。

経営学科

松野准教授

[専門分野]
経営組織論、NPOと企業のコラボレーション、NPO論
[主な担当科目]
非営利組織経営学A・B、経営学入門1

Profile

2012年、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。博士(商学)。釧路公立大学経済学部准教授を経て、2023年4月より本学部に着任。経営組織論を専門とし、主に非営利組織に関わる人や企業との連携に焦点を当てた研究を行っている。

社会課題に向き合う
視点とスキルを培う

先生は経営組織論を専門に「非営利組織」における
人のマネジメントや企業との関わり方について研究をされていますが、具体的な内容を教えてください。

人と企業を巻き込む、非営利組織のマネジメントについての研究

経営組織論とは、組織に関わる「人」に焦点を当て、組織の目標達成のために、組織内外の人や集団、他組織をどのように動かし、経営するべきかを追究する学問です。その中でも私は特に非営利組織(NPO法人やボランティア団体など)を研究対象にしています。これらの組織は、特定の社会課題に対する専門性や熱意を持つ一方で、一般企業よりも経済基盤が脆弱で、十分な経営資源の確保が難しいという課題を抱えています。こうした課題を乗り越えるために、人や企業をどのように説得し、巻き込み、協働関係を築くか、その仕組みを探っています。

なぜ、「非営利組織」と「企業や人」との関わりに興味をもったのですか?

一般企業が社会貢献を求められる時代になり、 NPOとの協働が活発になったから

きっかけは、大学院時代に書いた修士論文でした。当時、企業とNPOの連携が社会で注目され始め、NPOと協力し活動することが企業価値の向上につながるという潮流が生まれており、NPOと企業の協働で社会がより良くなるのではと調べ始めたのが研究の原点です。

調査すると、環境問題や貧困など、社会課題解決のために活動している団体はたくさんあるのに、資金面や協力者が不足していることでうまく経営できていないなどの課題が浮き彫りになりました。非営利団体だからこそ「経営」が重要であるにも関わらず、経営学の領域ではあまり研究が進んでいなかったことから、私の研究がスタートしました。

経営組織論の視点から社会課題の解決を学ぼうとする学生に対し、
先生のゼミではどのように研究を進めているのか教えてください。

地域と連携し、課題解決に挑むフィールドワーク型のゼミ

ゼミでは、「社会課題に取り組む組織のマネジメント」を軸に、地域や非営利団体と連携したフィールドワーク型の学びに力を入れています。現在はその一環として、北海道鶴居村と協働して地域PR活動を行っています。このプロジェクトでは、鶴居村が抱える「認知度の低さ」という地域課題に対し、大学生の視点からどのように村の魅力を発信できるかを考えることが目的です。学生たちは鶴居村を訪れ、フィールドワークや役場の方々と対話を重ね、最終的には東京で開催される地域イベントで使用する展示ブースの一部を制作する予定です。

別のチームは自力で販路を確保し成功している梨農園の経営スタイルを研究しています。直接、社会課題の解決に取り組んでいる組織ではありませんが、地方において元気な企業の存在は、地域の活性化に重要なことだと考えているからです。これらの課題解決に必要なのは、まさに商学部で学ぶ経営管理やマーケティングの知識です。今後はNPO法人の経営方法やビジネスモデルの分析・検証にも学生たちと取り組んでいきたいと思っています。

ゼミで取り組む学修を通じて、将来社会人として社会課題の解決に関わりたいと考える
学生も多いと思います。そのような学生に向けて、アドバイスがありましたら教えてください。

非営利組織と社会的企業、それぞれの特徴を知ることが大切

社会課題の解決に向き合いたいと考えたとき、思い浮かぶのは社会的企業や非営利団体だと思います。2つの組織の違いの1つは、取り扱う社会課題の性質や給与水準です。社会的企業はビジネス化できる社会課題を扱うことが多く、給与水準も一般企業と同等であるケースが増えています。一方の非営利団体は、ビジネス化が難しい社会課題にもアプローチできますが、給与水準は低い傾向にあります。

進路選択のポイントとしては、卒業後すぐに非営利団体に就職せず、まずは企業や行政組織で経験を積むことをおすすめします。非営利団体の仕事は、現場の活動だけでなく、組織運営・資金調達・広報・プロジェクト管理などのオフィスワークも重要です。しかし、業務を一から教える人的な余裕がないのが現実ですから、経営・マネジメント・財務・マーケティングなどの実務スキルを身につけたのちに、非営利の分野に移る方が能力を発揮しやすく、活躍できると思います。また、企業経験者の方が、NPOと企業の協働を円滑に進められるという研究結果もあります。
学生のうちにボランティア活動を通じて適性を見極めることも重要ですし、社会人として企業で働きながらプロボノとして非営利活動に関わる方法もあります。ぜひ視野に入れてみてください。

※プロボノ…職業上のスキルを活かす社会貢献活動

日本大学商学部での学びと経験が、
社会での活躍を支える力になる

松野先生が感じている、日本大学商学部で学ぶメリットは何でしょうか?

経営管理など社会で求められる知識を幅広く身につけられること

将来に役立つ実務スキルを身につけられるのが、商学部です。ゼミでの活動でもわかる通り、非営利組織も一般企業も求められる知識はほぼ同じです。経営管理・マネジメント・会計・マーケティングなど、幅広い分野の学びを得られるのが大きなメリットだと思います。

また、非営利組織の経営や会計のような、より専門性の高い科目が充実し、それらを専任の教員から学ぶことができるのも規模の大きい日大だからこそ。1年次から幅広く学び、少しずつ興味のある分野を深めていくことで将来の選択肢は確実に広がります。

最後に商学部の学生や高校生に向けてメッセージをお願いします

“思いやり”と“行動力”を大切に。それが社会で生きる力になる

皆さんは、将来、社会や企業といったコミュニティの一員になります。そこで良い関係を築くために必要なのは、相手の立場になって物事を考える力です。自分のやりたいことや成し遂げたいことを実現するためには、他者との協力は不可欠です。大学での学びや活動を通じて、相手を思いやる気持ちを育んでください。
学生のうちは時間に余裕があるので、いろいろなことに興味を持ち、挑戦してください。社会的企業が注目を集める中、大きなことを成し遂げなければ価値がないと思う方もいるかもしれませんが、道端に落ちているゴミを拾ってみるといった些細な行動が、社会に変化をもたらすこともあります。大きなテーマでなくても、「こうなったらいいな」と思うことを率先して行動に移してみる。そのような姿勢や意欲を大切にしながら大学生活を送ってほしいです。

松野先生にまつわるエトセトラ

研究室

松野先生にとって研究室は、研究の場でもあり、ほっと一息つける場所。そのため、本棚の一角には癒しスペースを設け、好きなキャラクターのグッズなどを並べている。NPO関連の専門書が多数揃っている。

恩師からの就職祝い

早稲田大学大学院時代の恩師から就職祝いでプレゼントされたボールペン。今も毎日持ち歩き、愛用しているアイテム。このペンを見ると、大学院時代を過ごした早稲田を思い出す。

前任校のゼミ生からの贈り物

前任校の1期生、2期生のゼミ生から贈られた写真立て。「先生、私たちの顔忘れないでね!」と渡された写真立てには、1人ひとりの笑顔が並ぶ。癒しアイテムのひとつなので、部屋の中心に飾られている。

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