私の資格取得ストーリー
中小企業診断士編

OBOGの体験から、資格取得にまつわるリアルなストーリーをお届けする「私の資格取得ストーリー」。第1回目は、学生にとって特に取得が困難と言われる「中小企業診断士」を、在学中に取得された春原誠さんにご登場いただきました。春原さんの体験談を交えながら、中小企業診断士とはどんな資格なのか、学生にとってどのようなハードルが存在するのか、どのような勉強方法が最適なのか、などを考えていきます。

森永ビジネスパートナー株式会社

春原 誠さん

2012年4月商学部(経営学科)入学。2014年8月に中小企業診断士1次試験合格、翌年には2次試験に合格し、2017年診断士登録。その他、BATICコントローラーレベルや日商簿記2級、ビジネス会計1級など数多くの資格を大学在学中に取得。2016年4月森永製菓株式会社入社、現在は森永ビジネスパートナー株式会社に出向し経理業務を担当。

経営コンサルタントの国家資格として、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家、それが中小企業診断士です。日本国内に存在する企業の9割以上が中小企業であり、さまざまな企業の経営や運営をサポートし、日本経済を根底から支えることが大きなミッション。スキルアップやキャリアアップをめざすビジネスパーソンからの注目度は高く、中小企業診断士試験の学習をすることで企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)に関わる知識や、論理的に考えて思考を整理し、その結論を相手に分かりやすく伝えるロジカルシンキングのスキルを横断的に身に付けることができます。

2017年9月、日本経済新聞に「数多くの士業の中で最もAI(人工知能)に代替されにくいのは中小企業診断士」という調査結果が掲載されました。あくまでも調査結果の一端であり断言できるものではないものの、定型業務の多い他の資格に比べて、経営者を説得する能力、社員から企業の現状を聞き出す能力、経営者と社員の双方の意見をバランス良く調整する能力など、広くコミュニケーション能力が重要視される中小企業診断士。経営者、社員、そして企業そのものに寄り添いながら経営の舵取りをサポートする。知識やスキルはもちろん、人間力が強く求められる資格といえるかもしれません。

中小企業診断士の試験は1次・2次と分かれており、1次試験は「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」の全7科目。2次試験は「組織・人事の事例」「マーケティング・流通の事例」「生産・技術の事例」「財務・会計の事例」の筆記試験が行われます。試験科目の幅広さと奥深さから、他の資格試験と比較しても難易度は高く、1次試験に合格するためにはおよそ1000時間の勉強が必要とも言われています。それにも関わらず毎年多くの受験者が試験に挑むのは、この資格にそれだけの価値があると見られているからでしょう。

中小企業診断士は独占業務がない資格としても知られています。つまり法律で守られた業務がないため、資格取得後の働き方も人により実にさまざまです。それまでの勤務先に留まり知識やスキルを仕事に活かす人、就職や転職をめざす人、独立開業する人など、それぞれの働き方に適した資格の活かし方が存在します。その反面、中小企業診断士は「足の裏に付いた米粒」と揶揄されることも。これは資格を「取っても食えない」ことを意味するもので、資格取得が即収入につながるわけではありません。それぞれの立場でスキルを磨き続け、優良顧客を獲得してはじめて、相応の収入が得られるというわけです。

学生が中小企業診断士の資格を有している場合、就職活動をかなり有利に進めることができると予想されます。学生の時点で経営の知識を持っていることは高く評価されますし、過去の合格者データを見ると学生の2次試験合格者は例年10名程度と圧倒的に少ないため、採用担当者の記憶に残りやすいというメリットが。このデータはまた、学生にとってのハードルの高さをも物語っており、ビジネス知識が問われる試験において、ビジネス経験のない学生にとっては問われている内容をイメージすることさえ困難な場合も。合格後の大きなメリットと、そこに至る困難な道程を比較し慎重に判断する必要がありそうです。

中小企業診断士は学生には難しい資格と言われていますが、日本大学商学部は学習環境として非常に恵まれていると思います。1次試験は経済学や経営、財務会計、法律など全7科目ありますが、これらの知識は、大学の授業カリキュラムの中にすべて散りばめられています。どの試験科目も、大学の授業で学ぶことができるため、大学の授業と資格の勉強を両立することができます。社会で活躍するために、4年間をどのように過ごすかは人それぞれ違いますが、“診断士への挑戦”を選択肢の一つとして考えてみても良いかもしれません。

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