広報誌「Kinuta」連動企画
商店街探訪学生ディスカッション

「Kinuta」35号掲載の「商店街探訪」にてお話を伺った「やおまんキッチン」さん。今回の連動企画では、金先生が行った取材内容をもとに学生たちがディスカッション。やおまんキッチンの現状を分析し、今後さらに売上・集客を向上させるためのアイデアを出し合いました。彼らが採用した分析方法は「SWOT分析」。これは経営戦略や計画の現状分析を行うための分析手法で、対象企業の内部環境と外部環境の分析を統合的に行い、ビジネスの機会を発見するもの。SWOTの「S=Strength」「W=Weakness」は自社の企業努力でコントロールできる内部要因、「O=Opportunity」「T=Threat」は政治動向や規制、経済・景気など、自社の企業努力だけで変えられない外部要因。それぞれを段階的に分析することで、やおまんキッチンの未来に迫ります。

  • 金 雲鎬 教授

  • 商業学科4年

    渡辺 菜穂

  • 商業学科3年

    西山 雄輔

  • 商業学科4年

    浅井 優

※学年は2019年度時のものです

まずは内部要因の「強み=Strength」の抽出からスタート。金先生の取材に同行した渡辺さんは、メニューに多用されている『野菜』とその『おいしさ』をピックアップ。以前単独で訪れた経験のある西山さんはSNSでも映えそうな『店内がおしゃれ』『居心地が良い』という印象を持っていたそう。このディスカッションでやおまんキッチンの存在を初めて知った浅井さんは、オリエン内容から『見たことのない野菜』が食べられることが強みと分析しました。その他にも地元密着店ならではの『リピーター』の多さについても言及され、強みの分析は終了。種類豊富な野菜とそれらを使用した料理のおいしさが、やおまんキッチンの大きな強みであることがわかりました。

続いて、やおまんキッチンが課題とすべき「弱み=Weakness」について考えていきます。渡辺さんからは店舗の外観に関して『分かりづらい』との意見と、主に学生への『認知度』が弱みと判断。またランチセットが1,100円~1,300円と学生には高いハードルとなる『価格が高い』ことも懸念。西山さんは夜の時間帯の営業を行っていないことから『営業時間が短い』と感じたそう。浅井さんからは公式のホームページがないことから『コミュニケーションチャネルが少ない』点と、スムージーをテイクアウトする場合でも入店しなければならない店舗構造について『スムージーが買いにくい』ことが挙がりました。商店街の個人商店ならではの特色は、時に弱みとなってしまうようです。

外的要因の「機会=Opportunity」について抽出していきます。西山さんから『周りの活気がある』ことが挙げられ、人通りの多い商店街に店舗を構えていることのメリットが指摘されました。浅井さんからはより大きな視点から、世間的なトレンドとして『健康志向が強い』ことが挙げられ、野菜を豊富に使ったメニューのポテンシャルの高さについて言及されました。また日大生をはじめ多くの単身者が店舗周辺を行き交っていることから『若者が多い』ことと、単身者ゆえの『若者の野菜不足』も機会になると分析。野菜を豊富に使ったランチセットやスムージーなど、メニューの特徴はそのまま、やおまんキッチンにとって大きな機会となることがわかりました。

最後に外的要因の「脅威=Threat」を見ていきます。渡辺さんからは、商店街自体に活気はあるものの、やおまんキッチン周辺まで歩くと人通りが少なることから『活気に差がある』との指摘が。興味深いことに「機会=Opportunity」では『周りの活気がある』ことが機会として挙げられており、同じ立地でもさまざまな要因によって機会にも脅威にもなり得ることが学べました。また野菜がたくさん採れるメニューが大きな特徴ではあるものの、近所のコンビニで野菜を買うこともできるとの話から『近くにお店が多い』、同様に商店街であるため青果の販売や飲食店は多く存在することから『競合商品がある』が挙げられました。商店街のメリットとデメリットが浮き彫りになるかたちとなりました。

次は、SWOT分析によって抽出された項目をベースに、店舗がさらに飛躍するためのアイデアを練っていきます。学生にはハードルが高い値段設定から『学割をつくる』、店舗外観の分かりづらさから『外観を分かりやすくする』、スムージーのテイクアウトを容易にするために『スムージーを買いやすくする』、店舗以外のチャネルが現状ないことから『チャネルを増やす』など、さまざまなアイデアが飛び交いました。ここで留意しなければいけないのは実現可能性とコスト。どんなに効果が見込めるアイデアでも、お金がかかりすぎるものは提案しても受け入れられる可能性が低いとされます。それらを考慮して、最終的に「コンセプト」として、やおまんキッチンへ提案することになったのは以下の3つでした。

ディスカッションでまとまった3つのコンセプトを、実際にやおまんキッチンのオーナー様へ提案しました。「メニューを店外に出すことは現状でもやっていましたが、写真があるとよりわかりやすいかもしれませんね。他の2点に関しても、検討してみる余地はありそうです。学生の方から意見をいただけると、店舗経営の良い参考になりますね。本当にありがとうございました」とのお言葉をいただきミッション完了。祖師ヶ谷大蔵の商店街をさらに活気づけるために、金先生と学生たちの探訪はこれからも続いていきます。

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